クリスマス・ミステリレビュー①

マイケル・イネス『霧と雪』原書房/2008


 一応クリスマスの話だが、その様子はあまり克明に描写されない。

 しかし傑作。

 年に一度の恒例行事として親族は、修道院跡に暮らす親族・バジルの家に集まる。今年ばかりはバジルがその家を売却しようかと考える二人の取引相手も訪れていた。そしてバジルの書斎で一族の一人であるウィルフレッドが銃弾を浴び、瀕死の重傷に。そこからは七人の事件関係者がお互いを犯人と名指し合う多重解決的な展開になる。

 機会はほとんど誰にでもあり、動機となぜ右半身を撃たれているのか(相手を殺そうと思うなら心臓か脳を狙うはずであり、容疑者は皆射撃についてそれなりの技術があるというのが前提だ)というのが推理の糸口となる。そのうちいくつかの説はかなり奇怪なものだったりする。

 そして結末には思わずスタンディングオベーションを送りたくなってしまった。

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