幽霊たちの不在証明/朝永理人
ロジックパズラー好きには堪らない本格学園ミステリ。
首吊り幽霊役の彼女は、いつ本物の死体になったのか。
第18回『このミステリーがすごい!』大賞の優秀賞に選ばれた作品で、ありそうでなかった文化祭のお化け屋敷という出し物を舞台に書かれたライトノベル系のミステリである。
被害者に想いを寄せていた語り手の閑寺尚と、クラスで影の薄い本作の探偵役である甲森璃瑠子の二人がコンビを組み、文化祭で起こった殺人事件の謎を追う。
分刻みのアリバイを聞き込みや検証を重ねて、ひたすらロジカルな推理で突き詰め、唯一無二の犯人を指摘するその論理の切れ味は絶妙で、ロジック派の私としては唸らされるものがあった。伏線回収とミスリードも見事。
ただ、受賞時の選評でも言われているように、動機があまりにも弱いことはネックである。ここさえクリア出来ていれば、完成度の高い作品になっていたであろうことが惜しまれる。
とはいえ、ロジックパズラーを愛する読者には一読の価値ありと言える作品であることは間違いない。
written by Saku